由利カオル

目標週一 実質月二 エッセイなど

日記

#10「孤独は回転寿司のレーンに乗ってやってくる」

一人暮らしというのは一種の麻薬であり、一度進むと簡単には戻れない一方通行の道路のようなものだ、と思う。誰かに時間を縛られることはなく、ご飯も自分で作っていれば食べたくないものは出てこない。同居人に気を遣う必要はないし、家事も好きな時にやれ…

#9「永遠に許されない罪もあるということ」

2021年7月23日PM8:00。57年ぶり二回目となる東京での夏季オリンピックが開幕した。2013年に開催地として選定された際には随分などんちゃん騒ぎだったはずだが、実際の開催が近づくにつれ明らかになったその失望に足るお粗末さは多くの人に知られる結果になっ…

#8「三行半と三分半は似ている」

これはYさん(仮名)の話なのだが。 ああ、やってしまったなあ、という気持ちでとぼとぼ歩く。何を隠そう、告白をされたデートの帰り道である。付き合ってほしい、という勢いに押され、ウンと頷いた後に(ウン……?)と猛烈に後悔し始めた。私のウン……?ポイ…

#6「déjà vuのかたち」

USJの任天堂エリアに、まだ行けていない。 折角友人と年休を合わせて立てた大阪への旅行計画は未だ猛威を振るうコロナウイルスによっておじゃんになった。元々ゲームが好きなので、そのゲームの世界を再現したという任天堂エリアは夢の塊のようで、本当はす…

#5「昨日までのひやむぎにごめんね」

私の世界に、数日前まで「ひやむぎ」は存在しなかった、と言ったら驚くだろうか。 四月に引っ越しをするにあたり、お茶漬けやカレールーやらが実家から押しつけられた。その箱の中でそいつは眠っていたのだ。 「ひやむぎ」とでかでかと書かれたパッケージ。…

#3「汝、怒りを忘れるな(メメント・ムカムカ)」

「Oさんはコロナでオトコ掴んだよな。ほら、マスクで顔半分隠れてるから」 外したとこ見たら違いすぎてビビる、と男の先輩がにや、と笑う。ヒヤ、と耳の先が冷たくなり、ざら、と心臓を無数の棘で撫でられたような不快さが胸一杯に広がる。結婚の経緯は彼女…

#2「宗教なんて無くなってしまえ」とあなたが言うので

(ホラーが苦手な方は※※※マークが出るまで飛ばしてください) 気がつくとダイニングテーブルの前に着席していた。木目の正しいテーブルの上には、豪華な晩餐が並んでいる。私の他に、私の恋人と姉がそれぞれ座っていた。誰一人喋らない。とても静かだ。 私は…

#1 「やっぱKing Gnuってすごいわ」

午後九時。ふと思い立って友達に電話しようと思った。夕食も食べ終わり、見る予定のテレビもない。資格試験の日程が三日後に迫っていたが、この時間から勉強するつもりもなかった。 一ヶ月ぶりに話すその名前を友達検索欄に入れる。仲の良かったはずの友達の…